健康の秘訣は口にあり!子供のころから鍛えるべき口腔機能とは?
むし歯だけじゃない歯と口のケア
定期的な歯科健診のススメ
6月4日~10日は「6(ム)4(シ)」にちなんで「歯と口の健康週間」です。
定期的に歯科健診に行った方がいいって聞くけど…とは言っても忙しくて、なかなか行けないよ。まぁ、毎日歯みがきしてるから大丈夫でしょ!
というあなた!
歯みがきさえしていれば大丈夫、というのはちょっと甘いかも!?
歯ブラシだけでは取りきれない汚れが溜まって、気づかないうちにむし歯や歯周病が進行しているなんてこともあります。また、歯医者さんによれば、口の健康が全身の健康につながるそうです。
さらに、虫歯を治す・予防することはもちろん大事ですが、もっと意識してほしいことが、食べ物を噛んだり飲み込んだりする「口腔機能」の維持向上。
お年寄りもさることながら、近年では小さな子供も機能が低下してしまっているとか!?
詳しい話を歯科医の城川和夫医師に聞きました。
口の健康は全身の健康!?
元気でいるためには歯と口のケアが大事
口は「食べる」「話す」「呼吸する」「表情をつくる」など、とても多くの機能を持った部位です。全身の中でもここまで多機能なところは他にありません。
そんな口の健康管理を一生を通して行っていこうというのが、歯科医療の中でも大きなテーマになっています。
というのも、「口の健康が全身の健康につながっている」ということが、さまざまな点で明らかになってきているから。
たとえば…
- むし歯や歯周病が、肺炎、糖尿病、心臓病、脳卒中、早産・低体重児などにつながる
- 65歳以上で歯が19本以下の人は、20本以上ある人と比べて要介護になりやすい
- 65歳以上で歯が少ない(義歯を使っていない)人は、認知症の発症リスクが上がる ※歯を失う原因は、「歯周病」「むし歯」が1位、2位
など。
口の健康管理をしていくことが全身のケアにつながります。
「毎日歯みがきをしている」という人も、実は取り切れない汚れが溜まっていて、気づかないうちに歯周病が進行しているかもしれません。
自分で食べられる、呼吸ができるという健康な状態をなるべく長く保つため、口腔機能の向上を意識しましょう。
そのためにも定期的に歯科健診でチェックする、自分に合ったケアの指導を受けるなど、かかりつけの歯科医を持つことが効果的です。
噛む、飲み込む、唾液を出す…本当はスゴい口腔機能
だけど、子供の能力が低下していて危ない?
食べる(食べ物を口に取り込む、噛む、飲み込む)、唾液を出す、しゃべるといった、口や口の周りの筋肉の働きをまとめて「口腔機能」と言います。長く健康でいるためにはこの口腔機能がとても大切です。
口腔機能は0歳から幼児期に発達します。
年をとると衰え、物を噛めなくなったり、うまく飲み込めなくなったりして、誤飲や誤嚥をおこして食べ物や唾液が肺に入って肺炎(誤嚥性肺炎)の原因になります。
子供の口腔機能が低下している?
ただ、近年では子供の口腔機能の低下が危ぶまれています。
- ふとした時に、口をぽかんと開けている
- 硬いものを噛めない、食べない
- 食べ物をいつまでもモグモグ噛んでいて、なかなか飲み込めない
このような様子が見られたら要注意。
鼻呼吸ができずに口呼吸が習慣(口ポカーン)になっていると歯並びが悪くなる、正しい飲み込み方ができなくなる、口臭の原因になる、風を引きやすいといったことにつながります。物を噛めないので丸呑みしてしまい、窒息や消化不良を引き起こすことも。
口腔機能がちゃんと成長しないまま大人になると、高齢になった時の衰え方も早くなる可能性があり、誤嚥性肺炎などの危険が高まります。
トレーニングは0歳から始めよう!
子供の口腔機能の発達は、0~3歳が重要です。
赤ちゃんは生後5~6か月ごろに始まる離乳食で段階的に口腔の機能、能力をはぐくんでいきます。
- 口を閉じて食べる
- 舌と上あごでつぶす
- 前歯でかみ切る
- 歯ぐきでつぶす
- 奥歯でつぶす(かむ)
といった順番で、舌やあご、口の筋肉を使った食べ方を学習していきます。
けれど、離乳食は赤ちゃんが食べてくれるだけで嬉しいもので、食材の種類は意識しますが、食べ物の硬さ、大きさ、一口の量、性質を考慮することがおろそかになりがちです。
歯の萌出など赤ちゃんの発達、能力に合わせた食べ物を選び、段階的に上手な食べ方を意識しましょう。
ここで意識して舌や口の使い方を成長させてあげないと、舌の使い方を間違える、筋肉を使わずに何でも丸呑みしてしまう、あごが育たない、歯並びや噛み合わせが悪くなる…といったリスクが出てきてしまいます。
子供の口腔機能をチェックしよう
勉強やスポーツと同じように、口腔機能も段階的に成長させてあげましょう。
幼児や小学生の口腔機能を向上させるには、まずはしっかり噛むことです。そして歯みがきをしっかりすること、舌や口周りの筋肉を動かす体操も効果的です。
かかりつけの歯科医で口腔機能をチェックしてもらい、アドバイスをもらうとよいでしょう。
働き盛りこそ要注意!後悔しないための定期的な歯科健診のススメ
歯と口の不調は50代から急に現れるといいます。
将来後悔しないために、毎日の歯みがきに加え、定期的な歯科健診で歯と口の健康を維持しましょう。
日本人の3人に2人は歯周病?
実は、厚生労働省のデータでは30代以上の3人に2人が歯周病といわれています。
歯周病は、歯と歯ぐきの隙間から侵入した細菌が歯肉に炎症をおこしたり、歯を支える骨を溶かして歯をグラグラにさせてしまう状態です。
歯周病の初期の歯肉炎は子どもの頃から始まるといわれ、長年かけて静かに進行していく病気で、日本人が歯をなくす原因の第一位となっています。
さらに、糖尿病、心臓病、脳卒中、肥満、認知症、早産や低体重児の出産にかかわりがあると言われています。
定期的に歯科健診に行き、歯みがきでとりきれていない汚れを落としたり、歯ぐきの状態をチェックしてもらうなど、念入りにケアしておきたいですね。
ストレスも歯の大敵!
歯と口の健康のためにできること
また、最近ではストレスのせいか「歯の食いしばり」で受診する人も増えています。
夜寝ている間に歯を食いしばっていて、歯がすり減ったり、あごの関節が痛くなったりといった悩みを訴える若い女性も少なくないようです。
ストレスで唾液の分泌が悪くなる人もいて、むし歯のリスクが上がる、消化不良の原因になる、喋りづらい、口臭が気になる…などの悩みが出てきます。
身体にいい物は、歯にもいい。逆もまたしかり。
ストレスも例外ではありません。
- 食べ物をよく噛むこと
- しっかり歯みがきすること
- 甘いものをだらだら食べない
といった基本を守り、ストレスを適度に発散させながら、歯と口を大切にしましょう。
生涯ずっと健康でいるために大切な歯と口の健康。
子供からお年寄りまで、しっかりケアに取り組みましょう。
取材協力:城川和夫医師(富山県歯科医師会副会長、富山歯科総合学院学院長)
記事編集:nan-nan編集部