昭和初期の屋台の味を守る富山の老舗ラーメン店【柳の下 末弘軒】向こうが透けて見える極薄とろとろの手打ワンタンメンは客の8割が頼む名物メニュー
「昭和の始め、最初はこんなラーメンから始まったんだよっていうのは伝えていきたいし、残していきたいですね」
こう話すのは、富山市中心部に店を構えるラーメン店「柳の下 末弘軒」の3代目店主の山口一弘さん。
屋号と暖簾を客がおくったことに由来
富山市中心部の老舗ラーメン店
末弘軒の創業は、1931(昭和6)年。屋台のラーメン店としてスタートしました。
その当時、富山市には30軒ほどのラーメンの屋台店があり、見た目ではなかなか見分けがつかなかったことから客に「末弘軒」という名と暖簾をもらったことが由来なんだそう。
その創業から5年後の1936年、現在の地に店を構え、多くの常連客が訪れる人気の老舗店となっています。
客の要望から生まれた名物のワンタンメン
ワンタンが多く麺が少ないのが末弘軒の特徴
そんな末弘軒の名物メニューは、客の8割が頼むという手打ワンタンメン。
実はこのワンタンメンもまた、客の要望に応えたのがはじまりでした。
「当初は中華そばとワンタンの単品メニューだったんですが、ワンタン好きのお客さんが『ワンタンの中に麺を入れてくれないか』って言われてはじめたのがワンタンメン。だから、うちはワンタンが多い。麺は通常の半分」(山口さん)
そんなわけで、末弘軒のワンタンメンはとにかくワンタンが多いのが特徴。麺は通常の半分、とはいえ、ワンタンのボリュームがしっかりあるので、食べごたえも十分あります。
向こうが透けて見えるほど極薄な手打ちのワンタン
毎日手打ちで作られるワンタンの皮。丹念にこねた麺生地を何回も折りたたんでは伸ばし、折りたたんでは伸ばし…何度も繰り返しながら、仕上げます。
「ほら、透けて文字が見えるでしょ」と山口さん。
確かに、皮の向こう側が透けて見えるほど薄く仕上がっています。
この極薄の皮に豚のひき肉を包みこんで完成したワンタンが、ワンタンメンには全部で10枚。
皮が薄いので舌触りがとっても繊細なことに加え、スープをたっぷりとまとってとろとろのワンタンはちゅるっと気持ちのいいのどごしを味わえます。
ワンタンと同様、麺ももちろんこだわりの手打ちです。
手打ちならではの不揃いなちぢれ具合が特徴で、噛んだときのもちっとした食感、スープとの絡み、とろっとしたワンタンとの相性が絶妙です。
「麺は中くらいの太さだね。太さも創業当時から変わってないよ」(山口さん)
創業当時から変わらない「鉄釜」で煮出すスープ
スープは煮干しをベースに国産鶏ガラを使って作られますが、ポイントは「鉄釜」を使うことなんだそう。
「ステンレスやアルミ鍋じゃなくて、鉄釜にこだわって作ってます。味は全然違うと思うよ」と山口さん。
確かに、素材のうま味や甘みを十二分に引き出したスープは深みがあるおいしさで、トゲのなくまろやか。昔ながらの甘みがある味わいです。
ラーメンという言葉もまだ浸透していなかった昭和初期の富山で「支那そば屋」からスタートしたという末弘軒。
「昔のラーメンの味、ラーメンの歴史も伝えていけたらなと思いますね」
(山口さん)
受け継がれる昭和の味は、今も世代を超えて多くの人に愛されています。
店舗情報
【柳の下 末弘軒本店】
住 所 富山県富山市総曲輪4-6-9
営 業 11:00~14:45(L.O)17:00 ~19:15(L.O)土日祝11:00~19:45(L.O)
電 話 076-421-7019
定休日 毎週水曜、第1・第3火曜(祝日でも休業)
駐車場 お近くのパーキングの指定駐車場をご利用ください
記事編集:nan-nan編集部