半世紀以上にわたって地域の住民に愛されているたこやき、たいやきの老舗店が富山県射水市にあります。
高岡市と射水市を結ぶ万葉線、その路面電車の音が響く新湊エリア。
その一角に「たい焼・たこ焼 山長さかい」はあります。
富山市中心部への出店で一躍有名店に
昔ながらの面影を残す たこやき店
店の外も中も昔ながらの面影を残す佇まい。
やわらかい陽の光が差し込む店の奥では、2代目店主の境健彦さんと奥さんの三栄子さんが、初代から受け継ぐ味を変えることなく丁寧にたこやきとたいやきを焼いています。
「私の代になって、生地の材料や量をちょっと変えてみたことがあるんだけど、おいしくならんかった。だから、親父がいろいろ考えて作った味を受け継いでいるの」
笑顔で境さんが教えてくれました。
「山長さかい」の創業は1968年。
健彦さんの父・政吉さんが、友人の営む関東のたこやき店に手伝いに行ったのをきっかけに、新湊店をオープンしました。
その後、1971年には百貨店などでにぎわう富山市中心部に西町店を開き、瞬く間に県下に名を馳せる人気の店となりました。
干しエビや昆布のだしが効いたたこやき
ひと口でパクッと食べたい小ぶりサイズで15個入り
小麦粉や薬味のうまみをしっかりと引き出すのが、「山長さかい」のたこやきの特徴。
生地には、砂糖や塩に加え、カレー粉など、10種類以上の調味料と薬味を入れていて、その分量を少し変えるだけでも「山長さかいの味」ではなくなるんだそう。
前日に仕込んでなじませた生地を使い、ネギや天かす、干しエビ、タコ、そして刻み昆布を入れて、だしの味をしっかり効かせます。
大きさは1粒、約3cm。
近年は大粒のジャンボたこやきや、揚げ焼きするカリカリ系のたこやきも人気ですが、「山長さかい」では創業当時から変わらない、ひと口でほおばれるようなふんわりとしたたこやきに仕上げています。
焼き上がったたこやきは、慣れた手つきでぴったりサイズの木箱へと詰められます。薄い木から伝わるぬくもりとほのかな香り…こんなたこやきに出会えることも、今では珍しくなりました。
「この木箱を作っている業者さんも少なくなって、なくなったらどうしようかと思ってる」（境さん）
すき間なくぎっしり詰まった15個のたこやき、最後にオリジナルソースを塗れば完成です。
青のりやカツオ節、マヨネーズはかけないのが「山長」スタイル。
「創業当時は青のりをかけとったんだけど、『青のりは歯につくからかけないで』っていう女性が多くて、親父がかけるのをやめたんです」（境さん）
そんなわけで青のりやカツオ節がなくても、タコや干しエビのだし、昆布の旨みがしっかり生地に含まれているので、物足りなく感じることはありません。
とろ～りとした生地からはたっぷり旨みがあふれ出し、タコはもちろん、刻み昆布の食感や塩気がいいアクセントになっています。
しっとりとソースが生地にしみ込むまで少し時間を置いたぐらいのものが好きという人も多いそうですよ。
北海道小豆をザラメで炊いた自家製あんこがたっぷり！
ずっしりと重量感あるたいやき
たこやきと並ぶ名物のたいやきも、初代店主の時代から材料や製法は変わっていないんだそう。
北海道産小豆にコクのあるザラメ（中双糖）で甘さを加えながら、1日かけて炊き上げたあんこを、生地の間にたっぷりと挟み込んで焼き上げます。
できたたいやきは、これまた昔ながらの茶色い包み紙に入れて手渡してくれます。
「油も湿気もいい感じで取ってくれるんやけど、この紙を作る会社も少なくなってね～。それも困ってるの」（境さん）
時の流れを感じながら受け取ると、たいやき1つでもずっしりと感じる重量感。ほどよく小豆の粒がのこっているあんこが、頭から尻尾までぎっしり詰まっていて、どこから食べても生地とあんこを一緒に味わうことができます。
あんこはただ甘いだけでなくコクも感じられて、1つ食べるだけでかなりの満足感。
「『およげ！たいやきくん』が流行ったときは、忙しく忙しくて、1日中、たい焼きを焼いとったわ」
半世紀以上にわたるたい焼とたこ焼の思い出話でお客さんと盛り上がることも。心もお腹も満たされる名店です。
【店舗情報】
【たい焼・たこ焼 山長さかい 中新湊店】
住 所 富山県射水市桜町18-5
営 業 9:30～18:00
電 話 0766-84-3148
定休日 水曜（不定休あり）
【富山西町店】
住 所 富山県富山市西町3-3
営 業 10:00～19:00
電 話 076-421-2365
定休日 水、土、日曜（不定休あり）
記事編集：nan-nan編集部
