経験ゼロから脱サラ開業した、やさしいまちの洋菓子店ーー富山市新庄【CAKE SHOP chito】自信作の苺ショートやグルテンフリーの糀チーズケーキも
2023年9月、富山市新庄町にオープンした洋菓子店「CAKE SHOP chito(ちと)」。
こじんまりとした、かわいらしいまちのケーキ店ですが、ちょっと珍しいケーキがあると話題の店です。
木を多く使ったナチュラルな店内は、大きな窓から差し込むやわらかい光もあって、シンプルながらぬくもりを感じる造りです。
ショーケースも決して大きくはありませんが、中にはショートケーキやチーズケーキ、プリンアラモードなど、丁寧に作られたケーキがたくさん並んでいます。
見た感じは、どこが「ちょっと珍しい」のかわかりませんが…
「うちのチーズケーキは小麦粉を一切使ってなくて、代わりに糀を使っているんです」
教えてくれたのは、代表の宮森雅也さん。
消化をサポートしたり、ビタミン類を生成したりと、酵素の働きが体にやさしいと言われる「糀」を粉末にして、チーズケーキを作っているんだとか。
「最初は生地がうまくまとまらず、ボロっとこぼれてしまって失敗の連続でしたが、食べてみてください。小麦粉を使ってないってこともわからないと思いますよ」(宮森さん)
小麦粉を使っていないグルテンフリーのチーズケーキは、とってもなめらかな舌触りで、チーズをたっぷり使った濃厚な味わい。
確かに小麦を使っていないだなんて、ふつうに食べている分には気づかないかもしれません。
「ね、わからないでしょ。わからないようにするのが大変でした。でも小麦アレルギーの人や健康志向のお客さんが喜んでくださっていて、苦労した甲斐があります」と、目を細める宮森さんですが、実は数年前まではまったくの素人。ケーキ作りの経験もなかったそうです。
48歳で夢を追い求めて製菓の専門学校に入学
「死ぬまでケーキを焼き続けたい」
かつては富山の大手百貨店に勤務していた宮森さん。コロナ禍をきっかけに、昔からの夢だった洋菓子店をやってみようと決意しました。
「やらないで後悔するよりも、やって後悔するほうがいいい、という言葉に後押しされて会社を辞めました」
当時、すでに48歳。
第2の人生を歩み始めた宮森さんでしたが、その道は厳しいものでした。
「私、ケーキを作ったこともなければ、小麦粉の“こ”の字も知らない素人だったので。朝4時から洋菓子店でアルバイトをして、9時から製菓の専門学校で勉強、YouTubeもたくさん見て勉強しました」
猛烈な努力と勉強の末に、夢をかなえた宮森さん。
会社を辞めると決断した時、体にやさしくおいしいケーキが作りたいと採算度外視の材料を使う時、いつも隣には背中を押してくれる奥さんの姿がありました。
そんな奥さんの愛称は「ちと」。
千歳あめのように細く長く愛される店にしたいという想いも加え、店名は「chito」に決めました。
「『おいしいです』と言ってくださるお客さまがたくさんいて、そういう人たちのためにも、もっともっとおいしいケーキを作っていきたいなと思ってます。死ぬまでケーキを作っていきたいですね」(宮森さん)
宮森さんの自信作でイチオシは、実は「糀のチーズケーキ」ではなく、「苺ショート」。
定番中の定番とも言えるケーキですが、その分、修行時代の経験を生かした丁寧な味わいが魅力です。失敗をくり返ししながら完成させたというスポンジ生地には、採算度外視で使っている県産のハチミツを入れ、高級生クリームがたっぷりと塗られています。
ケーキからも、宮森ご夫妻からも、幸せな気分と元気をもらえるやさしいケーキ店です。
【店舗情報】
【CAKE SHOP chito(ちとせ菓子店)】
住 所 富山県富山市新庄町157-1 HANAハイツ101
営 業 10:00~17:00
電 話 090-4328-9575
定休日 火~木曜
記事編集:nan-nan編集部