富山の和菓子とガラス作家のおいしいコラボレーション【薄氷本舗 五郎丸屋のきせつのさがしもの】
繊細なシルエットに、季節をイメージした淡い色合い。
見る角度によって表情がキラキラと変化する宝石のようなこれらは、実はお菓子。
富山の老舗和菓子店が手作りする「きせつのさがしもの」です。
2022年の発売直後から「美しい」と話題の商品で、予約開始直後に限定数がたちまち売り切れてしまうという人気ぶりです。
アート作品のようなお菓子「きせつのさがしもの」
「きせつのさがしもの」は砂糖と寒天から作る琥珀糖というお菓子。
一般的な琥珀糖は外側はシャリッと、中はぷるんとした食感ですが、こちらは半生タイプのしっとりとした食感。
繊細な色合いはカクテルによって表現されていて、一つひとつ異なる風味を楽しめます。
こちらはミント系にパイナップルジュースが入った爽やかなカクテル「アラウンド・ザ・ワールド」を使用。
「パロット」は香草系のリキュールで色っぽい香りのカクテル。
使用するカクテルを変え、季節にあわせた色合いや風味を表現しています。
上品な甘さと、ほんのり香るカクテルの風味を楽しめる大人のためのお菓子。
賞味期限は30日で、時間の経過とともに砂糖が再結晶化することですりガラスのように白っぽくなっていく変化も楽しめるそう。
「見るお菓子」という前提で作られているので、美しい姿をじっくりと鑑賞してから味わうのがよさそうです。
創業270年の老舗和菓子店 16代目の挑戦
「きせつのさがしもの」を生み出したのは富山県西部の小矢部市にある、江戸時代から続く菓子店「薄氷本舗 五郎丸屋」。
看板に掲げる銘菓「薄氷」は、北陸の冬の朝、田んぼの水面にうっすらと張った氷をイメージしたものです。
富山県産のもち米で作った薄い生地に和三盆を塗って乾燥させたお菓子で、加賀・前田藩時代には幕府にも献上されていたそう。お茶席の菓子として茶道界からの支持も高い品です。
そんな「薄氷」を現代風にアレンジしたのが、「T五(ティーゴ)」。
開発したのは、「きせつのさがしもの」の生みの親でもある16代目・渡邉克明社長です。
「T五」は天然素材を使い、5つのトーンとテイストを表したモダンなアートコンセプト。口の中に入れると「薄氷」と同様、するすると溶けていきます。
「その時代にぴったりというよりも、自分の子供や孫の世代まで受け継いでいけるような、末永く愛していただけるお菓子を考えていくのが私のモットーです」(渡邉さん)
きっかけはガラス作品への一目ぼれ
そう語る渡邉さんが生み出した「きせつのさがしもの」。
モチーフとなったのはガラス造形作家・山本真衣さんの作品です。
江戸切子などに使われるカットの技法で作る山本さんの代表作「Breeze(ブリーズ)」をSNSで偶然目にした渡邉さんはその美しさに一目ぼれ。
最初は一人のファンとして作品を鑑賞していましたが…。
「山本さんの作品を見た時に、和菓子で表現したいと思ったけれど同時に絶対に作れないとも思った。でも、無理をしてでも作っておくべきだという想いがあったんです。これを作らないと絶対後悔するんだろうなと…」(渡邉さん)
意を決した渡邉さんがこの想いを伝えてみると、山本さんは喜んでくれたそう。
というのも、山本さん自身も、作品をつくりながら「おいしそう。和菓子みたい」と思っていて、「誰かが自分の作品を和菓子で作ってくれたら…」と考えていたんだとか。
こうして、異なる世界でものづくりに励んでいる2人が意気投合。
ガラス作家の山本さんは作品を精密に再現するため、型取りや色、配列などを監修し、和菓子職人である渡邉さんはお酒のカクテルで色合いや風味を表現したいとバーテンダーのもとで指導を受けました。
ガラス作品と和菓子のコラボレーションが生んだ、大人のための食べられるアート。
発売直後から美しさが話題を呼び、現在は毎週金曜日にオンラインストアで数量限定の予約販売となっています。
※冬季は販売休止
きせつのさがしもの(秋色) 3780円
出典:KNBテレビ「ワンエフ」
2023年10月6日放送
記事編集:nan-nan編集部