だしは日本料理の土台。立ち上る湯気とやさしい香り、ひと口含むとじんわりと沁みわたって、冷えた体が内側からほぐれていくよう…。
カツオに煮干し、シイタケなど、だしを取る食材はいろいろありますが、なかでも富山県民にとってなじみ深いのが昆布ですよね。
高岡市にある「ひらき昆布店」では奥深い味わいを堪能できる、ちょっと特別なごはんをゆったりと味わうことができます。
高岡伏木で60年、市街地に移転した昆布カフェ
高岡市の市街地。高岡警察署や成美小学校からほど近い住宅街にある、落ち着いたグリーンのシャッターが店の目印です。
一見するとただのガレージのようで見落としそうですが、シャッターの奥に、店に続く空間があります。
「元は、伏木で祖父が6~70年前からやっていた昆布店なんです」と教えてくれたのは店主の松野さん。
母から店を引き継ぎ、伏木の店でカフェを始めたのが2021年のこと。
その店舗が能登半島地震の被害に遭い、2025年9月に現在の場所に移転して再スタートを切りました。
ガレージ奥のあったか空間
靴を脱ぎ、レトロなガラス戸を開けると、民家をリノベーションしたという落ち着いた空間が広がります。なんだか、おばあちゃん家のような懐かしさと安心感…。
天井が高く、中庭に面した窓もあって、実際の広さ以上に明るく開放的な印象です。
羅臼昆布、とろろ昆布… さまざまな昆布の販売や試食も
店の一角には昆布の販売スペースが。羅臼昆布にとろろ昆布、おしゃぶり昆布に昆布締め用の大きな昆布などさまざまな種類が並び、一部は試食もできます。
さすが昆布店。カフェ利用なしでお買い物だけでも大歓迎だそう。
天然だしと発酵調味料をふんだんに ちょっと特別なごはん
そんな「ひらき昆布店」で食べられるのが、糀と天然だしをふんだんに使った体にやさしいメニューです。
陶器のおひつに入ったホカホカのごはんに、真心こもったおかずの数々。思わず見入ってしまう静かな美しさ…。家族や友人とじっくり楽しみたい、ちょっと特別なおひるごはんです。
もったり食感で旨みが凝縮 鯛の昆布締め
この日のメインは、鯛の昆布締め。
醤油麹を使った自家製のタレは、梅かゴマの2種類から選ぶことができます。
口に運ぶとまず感じるのはタレのさわやかな風味。さらに、普段食べる昆布締めよりずっともったりとした食感で、噛むほどに昆布の旨みが広がっていきます。
塩麹をつけて昆布締めにしているんだそう。今まで食べたことがないような、濃厚で上品な昆布締めです。
このまま食べてもどんどんごはんが進みますが、もうワンランク上の楽しみ方も。
それが、お茶漬け。あったかいだしを回しかければ、霜が降りたように鯛の身がうっすらと白く変わっていきます。
昆布とカツオでとっただしは上品な風味で、ほっとする香り。鯛の旨みとも調和がとれた、なんとも贅沢な1杯です。
お好みで刻み海苔やそばの実をトッピングして味変もOK。
プリッとした鯛の身に、さらさらと流れるごはん… 食べる手が止まらなくなります。
ちなみに、メイン料理は日替わりで、お茶漬けか手打ち蕎麦です。
基本的には火・水・木曜が手打ち蕎麦の日、金・土曜がお茶漬けの日だそう。
旬の食材をていねいに
色とりどり、美しく並ぶ副菜も、丁寧に手作りされたものばかり。
醤油糀のきんぴらごぼうに、蒸し野菜、塩糀で味を整えた出汁巻き玉子。小鉢に入ったウドと菜花の酢味噌和えは、甘糀でやさしい風味に。
発酵調味料をいかした自然でやさしい味わいが、スッと体に馴染みます。
昆布巻きや昆布の佃煮も、もちろん手作り。
そのまま食べてもよし、ごはんのおかずにもなる、ちょうどいい塩加減です。
一皿ひと皿に作り手の心遣いが感じられ、ゆっくりと落ち着いて味わいたくなります。
デザートは豆乳もちの甘糀がけで、こちらも糀を味わえます。
天然だしと発酵調味料、そして旬の食材の豊かな味わいを、最後のひと口までじっくりと味わう… なんとも贅沢な時間を過ごしたような気持ちになれます。
日によっては満席となることもあるので、来店前の予約がオススメだそう。
子供連れOK。心と体がほっとするひととき
中庭を挟んだ離れは座敷席となっていて、子供が遊べるおもちゃもあります。
お子様ランチ(おばんざい、うどん、ジュースのセット)もあるので、子供と一緒に訪れてもゆっくりと過ごせそう。
「体にいいものを食べてほしい」自身の経験がまごころに
以前は射水市でカフェを営んでいたという松野さん。その時のメニューは今とは違ったそうでーー。
「パンやケーキを出す、一般的なカフェだったんです。何年も続けるうちに体調を崩して…『体にいいものを提供したい』と思いました。実家の昆布店にカフェを移転したのをきっかけに、今の形になったんです」(松野さん)
どんなに手間がかかってもひと皿ごとに素材の味を引き出す料理。天然だしと糀を使ったまごころのこもったメニューには、「老舗の昆布店だから」というだけではない、実感のこもった理由がありました。
ゆったりとした空間で、心も体もくつろげる時間。
毎日がんばる自分や大切な人を、ちょっと労わりたい…そんな時にはひらき昆布店で、やさしいおひるごはんを味わってみては。



