「振り茶」というお茶を知っていますか?
煮出した番茶などを茶筅で泡立てて飲む、日本各地に伝わる伝統的なお茶の飲み方です。抹茶を立てるのと似ていますが、抹茶がごく一部の僧侶や貴族の間で楽しまれたのとは違って、振り茶は庶民的なお茶の楽しみ方。代表的なものに沖縄の「ブクブク茶」、島根の「ぼてぼて茶」、そして富山の「バタバタ茶」があります。
今回紹介するのは、そんなバタバタ茶を楽しめる朝日町の伝承館。
山間の蛭谷(びるだん)集落で、地域のお年寄りが交替でスタッフを務め、バタバタの歴史や文化を教えてくれます。しかも、試飲体験は無料。まるで日常のお茶会にそのまま参加させてもらったかのような、あたたかくてアットホームな体験をすることができます。
朝日町蛭谷の暮らしを体感「バタバタ茶伝承館」
朝日町蛭谷にある「バタバタ茶伝承館」。
特産のバタバタ茶の試飲や加工作業の見学ができる施設として、2010(平成22)年4月にオープンしました。
館に集う地域のおじいちゃんおばあちゃんに、この地域に続く暮らしの文化「バタバタ茶」の伝統を教わりながら、なんと無料で体験することができます。
案内役は、地域の人による当番制。
バタバタ茶の試飲に加えて、その日の当番の方がふるまうお茶請けの山菜、お煮〆、煮豆、漬物などもいただくことができます。
お年寄りが何人も集まる雰囲気は、のんびりとした田舎のアットホームなお茶会そのもの。雰囲気まで含めて、バタバタ茶を体験することができます。
バタバタ茶とは?
「バタバタ茶」とは、黒茶という後発酵茶の1種で、中国のプーアル茶に近いんだとか。
茶葉そのものの酵素で発酵させる紅茶やウーロン茶とは違い、自然の菌の力で発酵させるのが特徴です。
現在も国内で作られているのは朝日町と四国の高知、徳島、愛媛の数か所のみで、高知の碁石茶、徳島の阿波番茶と同じ仲間です。
朝日町の蛭谷集落では古くから飲み継がれていて、その歴史は室町時代までさかのぼると言われます。地域で親しまれていたお茶を、仏教の説法に伴う供茶や酒飯茶として利用するようになったのだとか。
名前もそのまま、茶筅で左右に慌ただしく振る様子から“バタバタ茶”と言うようになったとされています。
そのバタバタ茶の文化を伝承するために、朝日町商工会が村おこし事業の一環として製造に取り組み始め、技術を受け継いでいます。
バタバタ茶の飲み方
古くから続く、とはいえ、特に厳しい作法や手順があるわけではありません。
煮出したお茶を器に注ぎ、専用の茶筅を使って泡立てます。
2本でひとつになったような茶筅は「夫婦茶筅」。山竹から作られていて、先は筆のように細長く伸びています。
茶筅を振ると、器のふちに当たってとカタカタと小気味いい音が鳴ります。
「泡がたてばそれでいいが」
親しみのある笑顔で見守るおばあちゃんが教えてくれました。
気軽に楽しめるのもいいところ。続けていくうちに、だんだんとお茶の表面に白い泡ができてきました。見よう見まねでもなんだかいい感じにできてしまいます。
簡単ではありますが、奥が深いのもバタバタ茶。
やはりベテランのおじいちゃん、おばあちゃんの手つきはなめらかで、見た目もきめ細かい泡が美しく、ふんわりとしています。
このように泡立てることで、口当たりがやさしくなり、まろやかな味になるんだそう。
飲んでみると、ひと口ごとに体があたたまって、やさしい黒茶の甘みに心も癒されていくようです。
お茶請けとともに和やかな時間を
バタバタ茶の試飲と一緒に味わえるのが、地域の方が当番制で持ち寄ったお茶請け。
厚揚げとゼンマイの煮しめ、カブの漬物など、ごはんにもよく合いそうなおかずがたくさん並びます。
「この漬物は、うちの孫が大好きなの」
「煮しめのだしはシイタケでとったの?」
飛び交う会話も、地域の飾らない雰囲気そのもの。
おいしいお茶とお茶請けに、話が弾みます。
集まる地域のお年寄りの中には、現在93歳だというおばあちゃんも。
週に4日、伝承館に通って、お茶とおしゃべりを楽しむのが元気の秘訣なんだとか。
文化の伝承を大切にしながらも、地域の人々の憩いの場にもなっている「バタバタ茶伝承館」。お茶を通して親睦が深まる、あたたかく和やかな空間です。
出典:KNBテレビ「いっちゃんKNB」
2025年11月11日放送
記事編集:nan-nan編集部



