「最近はふわふわのかき氷が流行ってますけど、うちは昔ながらのガリガリっとした目の粗い氷水です」
こう話すのは、「山川いもや 本店」の山川禎一郎さん。
夏はかき氷、冬は焼き芋で有名な富山市中心部の甘味処の3代目店主です。
「創業ははっきりわからないんですが、昭和2(1927)年には富山市の中央通り商店街で焼き芋を売ってたのは確かなんです」(山川さん)
石倉延命地蔵のすぐそば 富山のまちなかの甘味処
今から100年ほど前、当時は燃料店を営んでいたという「山川いもや」。
炭を作るときに出る“おがくず”を何かに利用できなかと始めたのが、焼き芋だったそう。しばらくしてからスタートしたという「氷水」も、今や山川の代名詞となる看板商品です。
「祖父の金太郎から受け継いだレシピのまんま。昭和のかき氷の味です」(山川さん)
店を構えるのは、創業の地である富山市中央通り商店街からもほど近い富山市泉町。
富山市のまちなかを流れるいたち川沿いにあり、“万病に効く”と湧き水を汲みに訪れる人も多い石倉町延命地蔵尊から橋をわたってすぐ。
店のすぐ近くには同じく“お地蔵さんの霊水”がこんこんと湧く泉町延命地蔵もあって、夏には涼を求めてひっきりなしに人が訪れる人気スポットです。
まちの復興とともに… 100年の時を刻む店の歩み
「この辺りは、1945年の富山大空襲で焼け野原になったんですが、祖父は戦後まもなくこの地で店を再開したと聞いてます。私は小さかったから何の記憶もないんですが、食糧難で砂糖を手に入れるのも大変だったそうです」(山川さん)
1989(平成元)年に建て替えたという現在の店舗には、戦火を逃れ、残されていたという山川の銘板が埋め込まれていました。
100年近い店の歩みと家族の歴史も物語る貴重な銘板。
「子供がね、『やもい川山』って何?って聞いてくるんですよ。右から読むって知らないから。面白いでしょ」
山川さんが目を細めながら教えてくれました。
祖父のレシピそのまま 昔ながらのガリガリかき氷
昭和のおもかげもちらほら残る店内には、テーブル席が20あまり。
いたち川沿いの桜並木の葉が青々と茂り、暑いなかにも涼感を誘う景色を横目に、メニューを選びます。
今ではなつかしい“みぞれ”や、子供たちの大好きないちごやメロン、大人にも人気の宇治の里(抹茶)をベースに、自家製アイスクリームや小豆、ミルク、白玉を好みでトッピングすることができます。
豊富なシロップとトッピング…好みでどれだけでも楽しみ広がる
今回は店で1、2を争う人気メニュー「白玉宇治ミルク金時」を注文しました。
注文を終えると、すぐさま、昔懐かしいガリガリという氷を削る音が店の奥から聞こえてきます。
体感温度も少し下がるような、涼を感じる夏の音。
のんびりと耳を傾けながら待つこと、1~2分…かき氷が運ばれてきました。
粗い目で削られているのが、見た目からもわかります。
崩れないようにスプーンですくって口の中に入れると、キーンとした冷たさが全身を駆け巡ります。
外は35℃に迫る猛暑。ドアを開け放った店内に吹く扇風機の風は、決して涼しいとは言えませんが、ほどよく暑さを残した風が心地よく感じられます。
宇治抹茶の特製シロップ 小豆もアイスも手作り
宇治の抹茶を使った特製のシロップは、上品な甘さとほろ苦さを楽しめます。
砂山で遊んだ山崩しを思い出しながら、いろんな角度からかき氷の山を崩し、味わっていると、なかからプルンプルンの白玉と小豆が出てきました。
祖父から父、そして3代目の禎一郎さんへと受け継がれたレシピで毎日仕込んでいるという小豆は、ほどよい甘さと舌触りのいい食感で、氷のおいしさをさらに引き立ててくれます。
戦前から提供しているアイスクリームも手間暇かけて手作りしたもの。
バニラと宇治抹茶、ほうじ茶(7月限定)の3種類で、ほのかな甘みとさらりとした口どけがクセになる味わいです。
かき氷にトッピングしてもよし、単品で味うのもよし。
もなかの皮に包んで手土産にする人も多い、昔ながらのアイスクリームです。
「うちは昔から変わりません。昭和のまんま」と、微笑む山川さん。
世代を超えて愛されつづける昭和の味。ガリガリ食感のかき氷は9月末までの販売です。



