この連載は、富山県公衆浴場業生活衛生同業組合が行ったスタンプラリーで全45軒を制覇し、「富山銭湯マイスター」の称号を手にした会社員「やまとさん」が、日々の銭湯めぐりや強く惹かれた入浴体験をつづる不定期連載のコラムです。
#10 朝日湯
前回の記事を書いたのが2月。降り積もった雪は解け、桜が咲いて、散って、ついには梅雨を迎えた。
もともとだらしのない性分、不定期連載のスタイルに甘えてサボりの極みを尽くしてしまったが、まだページは生かしてもらっているらしい。これがようやく節目の10記事目。随分時間がかかってしまった。
休日だったその日も、最低限の家事をこなしつつ、無目的にスマホなどを触っているうち、夕方の時間に差し掛かろうとしていた。
「風呂でも行くか」
一体化しつつあったソファから、よっこらせと身体を剥がし、堀川方面に車を走らせた。
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富山軌道線、いわゆる市内路面電車の堀川小泉の電停すぐそばにある「朝日湯」。
記事を書くのをサボっていた奴が言うのもなんだが、ようやくの紹介、という感さえある、個人的にお気に入り上位の銭湯だ。狭すぎず広すぎずの浴場に、白湯、ジェットバス、熱湯、薬湯がバランスよく配置されていて、サウナもあるのが良い。
500円の入浴料を払って脱衣場に入ると、湯上り濡れ姿、裸にタオル1枚の老紳士たちが、BS放送の巨人戦の行方を見守っていた。
令和に生きる昭和ストロングスタイル、銭湯カルチャーここに在り、といったところか。
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天窓の摺りガラスが、陽の光で虹色に彩られている。
17時を過ぎているというのに、季節柄、浴場は自然光で眩しいほどだ。明るいうちの銭湯の非日常感は、格別で、堪らない。野球好きの御一行が揃って上がったタイミングだったのだろうか、浴場内には人が少なく、静謐さも感じられる。ありがたい環境だ。
もとがだらしのない性分である。一時話題になった「風呂キャンセル界隈」とまではいかないが、家にいれば風呂に入るのが面倒で、さっとシャワーで済ませてしまうこともよくある。
そういうわけなので、銭湯が好きなのは「そこに行けばお湯が沸いている」というズボラな発想に紐づくところも、もしかしたらあるのかもしれない。そこにサウナがあるなら、なおラッキーだ。
でも、自分が銭湯に行く理由、それは結局、「空間」なのかもしれない。
浴槽で足を伸ばせる伸ばせないの話ではなく、広い空間で湯に浸かるという、自分にとってのささやかな非日常。その空間、そこで過ごす時間が、日常において心身にこびりついたストレスを解消してくれる。お湯が、流してくれる。
シンプルなことを理屈っぽく書いてしまったが、つまりは休日の夕方に、たっぷりの陽射しを感じながら浸かる薬湯は、最高に気持ちがよかったということだ。
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朝日湯を出ると、ようやく街がオレンジ色に染まろうとしていた。サウナと水風呂の効果もあってか、未だ汗ばむ身体に、夕暮れの外気が心地よい。
何もしなかっただらしのない休日も、銭湯で締めくくれさえすれば、何かを成し遂げたような満足感を得ることができる。せめて自分だけでも、自分のことを肯定してやりたいものだ。



