この連載は、富山県公衆浴場業生活衛生同業組合が行ったスタンプラリーで全45軒を制覇し、「富山銭湯マイスター」の称号を手にした会社員「やまとさん」が、日々の銭湯めぐりや強く惹かれた入浴体験をつづる不定期連載のコラムです。
#2 浦乃湯
富山市羽根。大学や運動公園がある五福から幹線道路を南下していくと、田園風景の中に比較的新しい宅地やスーパー、飲食店などが見えてくる。富山市の西側で南北方向に伸びる富山環状線と東西方向に伸びる富山小杉線。ふたつの県道が交わるこの辺りは、県内でも指折りの交通量の多さで、時間帯を問わず、ひっきりなしに車が行き来する。
そんな大通りから1本逸れると、途端にまちの表情は少し落ち着きを取り戻す。古くからの精肉店や鮮魚店が残る商店街、大きな市営団地にバッティングセンター…そんなまちの一角にあるのが、浦乃湯だ。
うまいこと会社を「脱出」し、時刻は18時過ぎ。 既に濡れ髪のすっきりした姿で暖簾から出てくる人もいれば、 軽トラで駐車場に滑り込んでくる人もいる。 近所から洗面器にシャンプーなど一式を携えて歩いてくる人もいる。遠くで蝉の鳴き声が響く日の入り前、人々は銭湯を通じて各々自分たちの1日のエンディングを…いや、 くつろぎの時間のオープニングを迎えようとしていた。
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「銭湯は温泉じゃないでしょ?」
「水道の水を沸かしているだけだよね?」
日頃、銭湯について語っていると、たびたびこんな反応が返ってくる。「 大きなお風呂で足を伸ばせるからイイよね」程度のものだ。
ちょっと、ムッとしてしまう。
自分もかつてはそう思っていた。 しかし県内のひと通りの銭湯を巡った今は、 それぞれの銭湯の湯に個性があると知っている。実際、ここ浦乃湯は、地下40mから水を汲み上げて沸かしているという。だからだろうか、お湯がやわらかい、肌あたりがなめらかな気がする。
もちろん、それは感覚的なもので、気の持ちように過ぎないかもしれない。 でもまぁ、それならそれでいいじゃないか。 結局のところ、自分が気持ちよくなれて、身体の奥底から「あぁぁ…」 と声にならない声が出れば最高なのだ。
ただ、銭湯に浸かることもなく、物知り顔で「大きなお風呂」 と括られてしまうとしたら、それは残念なのだ。それだけの話である。
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浦乃湯の楽しみは「超音波温泉」という名の、いわゆるジェットバスだ。背中や足裏にジェット気泡をあてがうと、 くすぐったい部分がわかる。そこが、 どこかしら身体の悪いところを治癒してくれるツボと信じ、 刺激に耐える。感覚が慣れてくる頃には、身体もあったまっている。
気泡攻撃に耐えながら壁に貼られている「超音波温泉」 の解説板を読む。
「大昔から東洋では…」
「近代科学の発展によって…」
「〇〇大の〇〇博士の示したデータが…驚異の…」
レトロな文言に、 文明の発展の過程と時代のおおらかさが垣間見え、 なんとも微笑ましい。
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暖簾をくぐり出ると、外はまだうっすらと日が残っていた。猛暑だった日中が不思議なほど、外気は涼しささえ感じる。
きっと今日はビールがうまい。 帰りはコンビニに寄って帰ろうと決めた。



