冬に旬を迎える魚介の代表、寒ブリ。
出世魚として知られるブリは、成長前のフクラギ(ハマチ、イナダ)、ガンド(メジロ、ワラサ)などの漁獲や年間を通じての養殖なども盛んですが、冬に日本海を南下してくる寒ブリは別格。産卵のために脂がのっていて、その脂の多さは、刺身で食べる際に醤油をはじくほどです。
そんな脂がのりにのったブリをお湯や出汁にくぐらせて食べる「ぶりしゃぶ」は、ほどよく脂を落として旨みを引き出せるため全国的にも人気が高いブリの食べ方。
ですが、その「ぶりしゃぶ」の発祥の店を謳う富山の割烹料理店では、お湯や出汁ではなく、あるものを贅沢に使うことで有名です。
富山市の中心市街地の桜木町で1972年に創業し、富山の旬の食材を本格的な懐石料理で味わうことができる「割烹 扇」。
熱伝導率の高い真鍮の鍋を前に、待っているとーー。
「お待たせしました」
着物姿の女将が抱えているのは、富山の地酒が入った一升瓶。
おもむろにその一升瓶をひっくり返したかと思いきや、鍋になみなみと注いでいきます。
そう、扇の「ぶりしゃぶ」は、湯通しではなく、日本酒にくぐらせるのです。
驚くのはこれで終わりではありません。
日本酒を注ぎ終わったかと思うと、電気を消して部屋を真っ暗にし、女将が沸騰した日本酒に火をつけます。
思わず「わっ!」と声をあげてしまうほどの火柱が。
「アルコールを飛ばした日本酒にブリをくぐらせることで、旨みがグッと強くなり、甘みも出てくるんです」
こう話すのは、料理歴30年を超える2代目マスターの扇浦学さん。
低温下で通常の倍以上の期間をかけ作る山廃仕込みの地酒を使うことで、燗でアルコールを飛ばしても風味や香りが強く残り、ブリの甘みに負けない重厚な味わいを楽しむことができます。
薄造りの氷見寒ブリをしゃぶしゃぶとさっとくぐらせ、表面がほんのり白くなったところで持ち上げてみると、脂ののったブリが日本酒の衣を纏い、見た目の輝きも増しているような気がしませんか?
大根おろしなどたっぷりの薬味と一緒に自家製のポン酢につけて食べると、まろやかで奥深いブリの美味を堪能することができます。
40年以上前に京都の寺の住職が作った鍋にインスパイア
日本酒を使って先代マスターが始めた「ぶりしゃぶ」
それにしても、なぜ日本酒を使うことにしたのでしょうか?
「その起源は40数年ほど前の京都にさかのぼります」
扇浦さんによると、京都のとある寺の住職が、余った日本酒とブリの頭を使って鍋を作り、檀家の方々にふるまったそう。その場にいた富山の檀家から話を聞いた先代マスターで父の扇浦博さんが、40年以上前に「扇」で再現したのが「ぶりしゃぶ」の始まりなんだとか。
寒ブリの中でも、とりわけ脂がのった極上品として知られる富山県氷見の寒ぶり。その地元と言える富山市の割烹料理店が、京都の寺の鍋にインスパイアを受けて進化させたという日本酒の「ぶりしゃぶ」、これからの時期にぴったりの贅沢な逸品です。
参考:KNBテレビ「とやま深堀りっ!ブリ編」
2017年1月29日放送
記事編集:nan-nan編集部



