日本で唯一のトロリーバスが2025年にも消滅へ
今こそ知っておきたい立山トンネルのトロリーバス
立山の主峰・雄山の真下を通り、立山黒部アルペンルートの室堂と大観峰を結ぶ3.7kmの立山トンネル。このトンネル内を走っているのが、日本で唯一ここだけで乗ることができる無軌条電車、いわゆるトロリーバスです。
ところが、トロリーバスを運行する立山黒部貫光が、部品の調達が難しくなってきている等の理由から、2025年にも電気バスに切り替える方針を明らかにしました。
というわけで、国内でトロリーバスに乗れるのも、もしかするとあと2年。あらためて知っておきたいトロリーバスについてのあれこれをまとめました。
トロリーバスってバスなの? 電車なの?
バスと名前がついているものの、法律上の分類は鉄道となるトロリーバス。
道路の上に張られた架線からポールで電気の供給を受け、電力を動力に走る点は電車に似ています。一方で、電車のようにレールの上を走るわけではなく、通常の平らな道路をゴム製のタイヤで走るため、見た目は(集電用のトロリーポールを除いて)普通のバスそのものです。
架線からトロリーポールで電気を受けるため、自由に動き回れるわけではありませんが、電車よりも小回りが効き、勾配が大きい斜面の登りに強いとされています。
また、ディーゼルエンジンで走るバスのように排気ガスを出さないため、環境への負荷が少ないというのも特徴です。
車両の後ろを見せてもらうと…複雑な電気配線が!
電気をここで動力に変えていることがわかります。
車両の内部はこんな感じ。
座席はふつうのバスのようですね。
ちなみに、運転席は、電車のようなタコメーターやスイッチとバスのようなハンドル(ステアリング)が組み合わさっていて、まさに電車とバスが合体しているような印象です。
かつては国内でもたくさん走っていた「トロバス」
現在は、国内では立山トンネルでのみ運行しているトロリーバスですが、ひと昔前までは東京や大阪、名古屋などの都市部でも運行され、「トロバス」の愛称で親しまれていました。
国内初のトロリーバスは、1928年(昭和3年)に現在の兵庫県川西市と宝塚市の間で開業した新花屋敷トロリーバス。急勾配を登る必要があったことから、バスや路面電車ではなくトロリーバスが採用されました。
その後、京都や名古屋での開業を経て、1951年に神奈川県川崎市で開業したのを皮切りにトロバスブームが到来。東京、大阪でもトロバスが走り、当時は必要不可欠な公共交通のひとつでした。
急速に普及した背景には、戦後の乏しい石油燃料事情があったほか、路面電車よりも建設費が安く済むという事情があったようです。
しかし、昭和40年代になるとマイカーが普及し、渋滞などの道路事情に弱いトロバスは、次第にディーゼルエンジンの路線バスや地下鉄などに置き換わるようになりました。
トロリーバスは、1972年の横浜市のものが廃業したのを最後に都市部ではその姿を見ることができなくなったのです。
立山黒部アルペンルートでトロリーバスが残った理由
立山黒部アルペンルートのトロリーバスは、もともと長野県大町市と黒部ダムを結ぶ関電トンネルで開業しました。
トンネル内で排気ガスを出すと喚起が必要となることや国立公園内における自然環境保護の観点から、1964年の開業から2018年の運行終了まで、長い間、山岳観光の見どころのひとつとして親しまれました。
一方、立山黒部アルペンルートの富山県側、立山トンネル内では開業時からディーゼルバスが運行していましたが、1996年にトロリーバスに転換。関電トンネルにならって、自然環境に配慮したことが大きな理由とされています。
長野側の関電トンネルでは2018年11月末をもって電気バスに置き換わり、トロリーバスは54年の歴史に幕を閉じましたが、それ以降、立山トンネルのトロリーバスが日本国内で運行中の唯一の路線となっています。
解体から保存へーー鉄道ファンの熱い想いで残った関電トロバス
関電トンネルのトロリーバスの運行終了後、地元の長野県大町市では貴重なトロリーバスの保存が検討されましたが、予算が足りなかったことから断念。これまでの車両と同様に廃車・解体されることとなり、最後の1台も富山県高岡市の解体業者の元に移されました。
しかし…
同じ高岡市在住の鉄道ファンが、「日本中の鉄道博物館や交通博物館に交渉して、なんとか保存・展示できないか」と熱い想いで方々の関係者と交渉。
一旦は断念した大町市ももう一度立ち上がり、クラウドファンディングで保存の道を探ることになりました。
そして…
クラウドファンディングで、目標の180万円を大きく上回り、見事にプロジェクトが成立。
寄付金とともに全国のトロバスファンから熱いメッセージが寄せられました。
関電トンネルを走っていたトロリーバスは現在、立山黒部アルペンルート 長野県側の入り口、大町市の扇沢駅に設けられた「トロバス記念館」に展示され、日本のトロバスの歴史を後世に受け継いでいます。
トロバス記念館の情報はこちら
https://kanko-omachi.gr.jp/spot/トロバス記念館/
乗れるのも残りわずか。立山トンネルのトロリーバス
標高2450m、立山黒部アルペンルートの室堂と大観峰を結ぶ立山トンネルを走るトロリーバス。
環境への負荷を配慮し、ディーゼルバスからトロリーバスに変わったのが1996年。以来、立山の主峰、標高3003mの雄山直下を走っています。
3.7kmのトンネルの走行するのにかかる時間は、約10分。
導入から30年近くがたち、部品を調達することができなくなっているなどの理由から、2025年からは電気バスへの置き換えが検討されています。
立山黒部アルペンルートには、トロリーバス以外にも、途中に支柱がないワンスパン方式で日本一長いロープウェイや全線が地中を走るケーブルカーなど、日本でここだけの珍しい乗り物がそろっています。
国内最後となるかもしれないトロリーバスに乗れるのは、今だけ。
夏の登山シーズンや秋の紅葉シーズンの行楽で訪れた際には、ぜひ乗り物にも注目してみてくださいね。



