
「せっかく富山に来たがなら食べてかれ!」な地元民オススメのグルメと言えば、「糸庄」のもつ煮込みうどんや「ぼてやん」のお好み焼きなど、有名店や人気店さまざまですが、富山県西部(呉西エリア)で忘れちゃいけないのが、高岡市「吉宗」のカレーうどんです。

「吉宗」がある高岡市は、国宝に指定されている瑞龍寺・勝興寺をはじめ、加賀藩前田家にルーツを持つ400年以上の城下町文化と銅器産業など、歴史と伝統文化が色濃く残るまちです。
そんな高岡の中心部から高岡古城公園や高岡市美術館を経て、市役所や市民病院があるエリアに店はあります。

外観や店内は、黒い梁や貫に白壁が映える伝統的な「ワクノウチ」の古民家風。

こじんまりとした小上がりと天然木のテーブルも、落ち着いた雰囲気が漂っています。
16種のスパイスと企業秘密の隠し味3種が決め手
客の9割が頼むというカレーうどん

「吉宗」を訪れる客の9割近くが注文するのが、カレーうどん。
大きめのどんぶりに、コシのある食べごたえ抜群の中太うどん、とろみのあるカレールーは麺が見えないほどたっぷりとかかっています。

カレーは、16種類のスパイスを合わせ、さらに隠し味として3つのモノが入っているらしいのですが……もちろん、隠し味は企業秘密。
「おいしいカレーを作りたいと、いろんなものを入れてチャレンジしているうちに今のカレーができあがりました。でも、実はまだ進化の途中なんです」
こう話すのは、二代目店主の下野洋雄さんです。
だしで薄めたりのばしたりはせず、ほどよい辛さと深みのある甘みがクセになる味わい。超人気店となった今でも、週に1度は従業員全員がカレーうどんを食べて、味のチェックには余念がありません。
味がしみ込んだ鶏肉と太めに切った長ネギもたっぷり!
余ったカレーをごはんで食べるのが定石

「吉宗」のカレーうどんの特徴となっているのが、ゴロゴロと入った大き目の鶏肉と仕上げに加えられる白ネギです。
中まで味がしみ込んでいる鶏肉は、うどんと同じぐらい食べごたえがあります。
「マグロ?って聞かれることがあるんですが、なんの変哲もない鶏肉です。醤油とだしで中まで味が染み込むように、長時間煮込んでいます。煮汁はかなりしょっぱいんですけど、それぐらいが、うちのカレーうどんに合うんですよね」と、洋雄さん。

そして、太めに切った白ネギも忘れてはなりません!
ザクッとした食感と辛みがまたカレーうどんにぴったりとあって、なくてはならない存在感を示しています。

決して刺激的な辛さではありませんが、もう少しまろやかにしたいという方は、生卵を落とすのがオススメです。
カレーと混ぜながら食べるととろみとコクのある甘みが際立って、マイルドな味わいに。味変として楽しむこともできます。

さらに、カレーうどんを頼む客の大半が、ごはんを注文。
炭水化物のとりすぎは気になりますが…誘惑には負けられません。
箸休め的にカレーうどんの合間に挟むのもよし、余ったカレールーをかけてカレーライスでシメるのもよし。
こだわりのカレーは、ごはんともよく合うんです。
実は、創業時にはなかったカレーうどん
著名な映画監督や作家が愛したことで一躍人気に


今でこそ、富山県で「吉宗」と言えばすぐに「カレーうどん」と出てくるほどイメージとして定着していますが、意外にも1972年の創業当時のメニューにはカレーうどんはありませんでした。
四国や名古屋で製麺の修行をしたという初代店主の下野吉宗さん。
うどんとそばを中心にした大衆食堂としてオープンした店に、何か看板商品を作りたいと模索する中、生み出したメニューのひとつがカレーうどんでした。
そんなカレーうどんが一躍人気となったきっかけは、富山を舞台にした映画「少年時代」のメガホンをとったことでも知られる、映画監督の篠田正浩さん。
「監督お気に入りのカレーうどん」という記事が地元新聞紙に掲載されると、県の内外から客が訪れるほどのヒットメニューになりました。

以来、有名人も数多く訪れ、作家の五木寛之さんが「百寺巡礼」の旅で国宝・瑞龍寺を訪れた際に食べたことから、本を片手に「吉宗」を訪れるファンも少なくないんだとか。


もちろんカレーうどん以外の、定番のうどんメニューもあります。
「カレーうどんが苦手なお客さんもいるでしょ。そうすると、家族で食べに来れないじゃないですか」と洋雄さん。
忙しさのあまり、メニューのバリエーションは減らしましたが、それでも早朝3時からだしを取り始めるなど、カレーうどん以外のメニューでもファンをうならせています。

高い人気を裏打ちするように、こだわり抜かれた技と探求心に満ちた一杯。
高岡を訪れたなら、ぜひ味わってみてください。
【店舗情報】吉宗
住所 富山県高岡市宝町7-4
営業 水~金曜 11:00~15:00 17:00~20:00
土・日・祝 11:00~20:00
電話 0766-24-1767
定休 月曜 火曜
参照:「KNBわいどプラス1」
2005年1月26日取材
記事編集:nan-nan編集部