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アナウンサーブログ

夏の「後立山連峰」縦走・前編(白馬岳~不帰嶮~唐松岳) 

プライベート 2020/08/26

後立山連峰から見た剱岳と立山

8月17日から「後立山連峰」(うしろたてやま)の縦走に出かけました。後立山連峰とは、立山や剱岳から見て黒部川の対岸、つまり“後ろ側"にある富山県と長野県の県境を南北に連なる山々です。日本百名山のうち3山(白馬岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳)を登る3泊4日の日程(GPSウオッチで約43km)。ルート上には“不帰嶮"(かえらずのけん)と“八峰キレット"(はちみね)という日本三大キレットのうち二つがあり、登山道の難易度情報“山のグレーディング"で最難関の“E"ランクです。初めてでしたが単独での山行。登ってみると意外な発見がありました。
※「キレット」とは漢字で「切戸」と書き、山と山をつなぐ尾根が深く切れ落ちている難所。剱岳では「窓」という。


標高1230mの「猿倉」から出発


白馬大雪渓の取り付き


中央やや右の白っぽい鋭い岩峰が“天狗菱"

■【1日目】猿倉~白馬岳~白馬山荘(約4時間・9km)
出発の起点としたのは、長野県の白馬八方バスターミナル。無料駐車場に車を停めて、バスで猿倉に向かいます。白馬岳(2932m)を目指す様々なルートがある中、日本三大雪渓の一つ“白馬大雪渓"を通ってみたいと考えたからです。

準備を整えて午前7時半すぎに猿倉を出発。約1時間半後、雪解けのためかなり上部で大雪渓の取り付きに到着。アイゼンはありませんでしたが、つま先を雪面に打ち込む“キックステップ"で難なく登れました。雪渓の所々には大きな岩が点在しています。ここで注意が必要なのは“落石"。雪の上なので音もなく転げ落ちてくるといいます。その一番の原因は、左手に聳える杓子岳(しゃくしだけ・2812m)下部の天狗菱からの崩落です。


短い夏に競うように咲く高山植物


花の写真で解説してくれるグリーンパトロール隊員

大雪渓を越えると、急な登り。そして間もなく広がる高山植物の花畑。途中にはグリーンパトロール隊員がいて花の名前などを解説してくれます。稜線に出ると飛ばされそうな強風に驚きます。3時間半あまりで1泊目の白馬山荘に到着。リュックを降ろして登ること約10分で白馬岳山頂に到着です。


360度のパノラマビューを説明する山頂方位盤

「日本百名山」の著者、深田久弥は「この山を東西の横から眺めるよりも、南北の縦から望んだ姿が好きである」と書いています。確かに翌日、振り返って南から望んだ白馬岳は「東側が鋭く切れ落ち、キッと頭をもたげたさまは、怒れる獅子(日本百名山より)」のよう。これは非対称山稜と呼ばれ、冬場に西側斜面(富山県側)に積もった雪が、強い西風に吹き飛ばされて東側(長野県側)に大量に溜まり、それが崩れて浸食が進んだと考えられています。

白馬岳の山頂からは2日目に向かう予定の杓子岳(2812m)と白馬鑓ヶ岳(2903m)が連なって見えました。白馬岳とあわせて「白馬三山」と呼ばれています。そして、その向こうには剱岳と立山の姿を望むことができました。


杓子岳の登山道から振り返って望む白馬岳


手前左が杓子岳、その右奥が白馬鑓ヶ岳

白馬山荘は収容人数800人の日本最大級の山小屋。新型コロナウイルス感染防止対策をどうしているのかも知りたくて泊まってみました。すると、“密"にならないよう宿泊は事前予約限定の300人(この日の宿泊者は約50人)。寝床は間仕切りのある2畳スペースに1人分のスペースを確保。食堂入口ではフェイスシールドを着けたスタッフに手指をアルコール消毒してもらい、席も互い違いになるよう配置。布団は毎日のシーツ交換ができないため、登山者にシュラフのインナーシーツを持参するよう求めていました。これらの対策は長野県が発表した“入山注意報"によるものです。この他の小屋も同様の対応でした。自分も消毒液、体温計、マスクなどを携行しました。


廊下を挟んで両側に寝床がある


間仕切りのある2畳が1人分のスペース


食堂入口で1人ひとり手指をアルコール消毒


持参したインナーシーツに入って互いの感染防止

この日の夜は、暴風雨。2日目は絶壁の岩場を登る“不帰嶮"(かえらずのけん)の通過を予定していたため緊張で寝不足ぎみでした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   



長野県側に広がった雲海

■【2日目】白馬山荘~唐松岳~不帰嶮~五竜山荘(約8時間30分・15km)
朝5時半に白馬山荘を出発。依然、風が強くガスがかかっていましたが、雨は上がり所々に青空も見えていました。長野県側に広がる雲海が標高の高さを感じさせます。まず目指すのは杓子岳と白馬鑓ヶ岳。特に困難な個所はなく1時間半あまりであっさり2峰に到達。


左:杓子岳 右:白馬鑓ヶ岳


杓子岳山頂で


白馬鑓ヶ岳山頂で 

天狗尾根のアップダウンを繰り返しながら不帰嶮を目指し、約3時間後に到着したのが“天狗の大下り"。ここからが難所です。約300mの急斜面を一気に下って最低鞍部の“不帰キレット"(2411m)へ向かいます。反対の南側にあるはずの唐松岳(2695m)はガスがかかって望むことはできません。足元はザレて滑りやすく鎖場もある嫌な感じのルート。


気持ちよい天狗尾根の稜線歩き


「天狗の大下り」の急斜を下っていく!


唐松岳はガスの中

ここで突然ガスが切れて、風も止みます。すると、眼前に現れた唐松岳の鋭い岩峰。「いったいどこからどう登るのか!」。左から順にⅠ峰、Ⅱ峰北峰、Ⅱ峰南峰、そして、Ⅲ峰と重なるように見えるのが山頂です。これが“不帰嶮"。不穏なネーミングに心がざわつきます。


登山者を圧倒する唐松岳の急峻な岩峰

Ⅰ峰はピークを巻いて右側の登山道を難なく通過。ここから先が最大の核心部分です。Ⅱ峰北峰のちょうど真ん中に登山者の姿が。画面をアップすると赤いウエアを着た人がいるのが分かります。写真や動画を見て調べていたけれど目の当たりにすると、もう笑うしかありません。下らか見るとオーバーハングしているよう。


白い矢印の先に赤いウエアを着た登山者がいる


アップにすると岩肌に取り付いているのが分かる


下から見上げたⅡ峰北峰の岩壁 

取り付きから鎖があり、これを頼りに足場を確認しながら一歩一歩登ります。感覚的な斜度は70度以上。ルートにはほぼ鎖があるので「これを握ってさえいれば滑落することはない」と、自分に言い聞かせます。本当は高所恐怖症です。上部には岩と岩の切れ目に架けられたハシゴが。これを渡らなければ先に進めません。下を見ると、少し前までいた広場が小さく見えました。渡り切って尾根の反対側に出ると「何だ、普通の登山道!」。最大の核心部を越えた瞬間でした。


滑落すればケガでは済まないと考える


下を覗き込むと10分程前にいた中央やや左の白っぽい広場が小さい


このハシゴを渡って稜線の反対側に抜ける

しかし、その後も所々に鋭い岩峰が立ちはだかり、登山者を威圧するよう。最後によく知られている“浮石"を右に見ながら岩をよじ登るとⅡ峰北峰をクリア。この区間の所要時間は約1時間。岩に擦れて膝は傷だらけ。緊張と集中力があっても痛かった。


近くに寄ると不思議とルートが見えてくる


絶壁に挟まったいつかは落ちるであろう“浮石"


岩を登り上がると視界に入る“不帰Ⅱ峰北峰ピークの看板“


同じところを何度も擦り付けるのでかなり痛い

ここから先は、気持ちのいい稜線沿いの登山道。右手には剱岳と立山の姿。出発から約6時間で唐松岳山頂に到着しました。唐松岳は八方尾根から登る手軽なルートもあり山頂はちょっとした賑わい。360度のパノラマが広がり、南側には3日目に登る予定のどっしりとした山容が印象深い五竜岳(2814m)を望むことができます。


剱岳をバックに登山道で小休止する登山者


唐松岳山頂に辿り着きホッとした瞬間


登山者で賑わう唐松岳山頂


どっしりとした岩の塊「五竜岳」

天気はすっかり安定していました。山頂直下には唐松岳頂上山荘がありベンチでランチタイム。剱岳と立山を正面に眺めながらの贅沢な時間でした。


山頂直下にある“唐松岳頂上山荘"


沸かしたお湯を注いで作ったリゾットで空腹を満たす

ここから2日目に宿泊予定の五竜山荘へ。コースタイムで2時間半。核心部を越えて安心しきっていましたが、そんなに甘くありませんでした。すぐに“牛首"と呼ばれる地点に到り、下りの鎖場が連続し再び緊張を強いられます。鞍部を通過し樹林帯を抜けて一面ハイマツの間を登り切ると、眼下に赤い屋根の五竜山荘が見えてきました。


"牛首"の鎖場が続く地点に立つ登山者


片側が切れ落ちた鎖場を通過


一面ハイマツが広がる西側斜面


赤い屋根の五竜山荘


壁に描かれた武田信玄の家紋「四つ割菱」

その壁には、戦国時代の武将、武田信玄の家紋「四つ割菱」が。当時、この地が武田の勢力範囲で、五竜岳の残雪の形が“武田菱"に似ていたことから「御菱」(ごりょう)と呼び、それがゴリュウに転訛したという説があります。が、確かな文献はないということです(日本百名山より)。


「長野県夏山常駐パトロール隊」の隊員


白い矢印の先に黒いクマがいる

五竜山荘には「長野県夏山常駐パトロール隊」の隊員がいました。登山道の状況や天候など様々な情報を教えてくれる頼りになる存在です。富山県だと県警山岳警備隊の役割に近いのですが、長野県は登山者が多く警察だけでは対応できないため、麓のペンション経営者など民間人が警察と無線で連携しながらその役割を担っているのです。運営費用は長野県が負担し、この山域ではことし13人が担当しているといいます。

その隊員が指差して教えてくれたのが山荘から300mほど先の東斜面にいる親子クマの存在。高山植物のシラネニンジンを食べに毎日のように姿を現しているということです。山荘やキャンプ場に近づけないようゴミの処理などが大切だと話してくれました。


毛勝山の北肩に沈む夕陽

この日、山荘から見事な夕焼けを見ることができました。魚津市の毛勝山に沈む夕陽です。3日目も晴天を確信しました。

※後編は近日中にアップします。
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